男の子と女の子2人のママであり、泌尿器科医である岡田百合香先生の連載。今回は「応用行動分析で考えるトイレトレーニング」全3回シリーズの最終回です。療育の現場などで多く使われている「応用行動分析」とは、行動の変化を促すために科学的なアプローチをすることです。「お母さん・お父さんのためのおちんちん講座」ママ泌尿器科医#59です。
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行動のあと
岡田 これまで、2回にわたって亀田准季先生に、「応用行動分析」の考え方からトイレトレーニング(以下、トイトレ)についてお話を聞いてきました。今回は最終回という事で、「トイトレ成功に導くワザ」をいくつかご紹介いただきたいと思います。
亀田 よろしくお願いします。これまでは、トイトレを行うときに必要なことを「応用行動分析」の観点からお話してきました。基本はほめ言葉を使って子どものモチベーションを高めることが大切でしたね。
今回は基本に加えて。モチベーションを高めるワザを紹介します。まずは、「シール作戦」です。
目標を達成し、ほめるタイミングでシールをあげて貼っていくという方法です。「成功の証」が目に見えることは、やはり子どもにとってもうれしいはず。また、カレンダーやマス目などに貼り続けることで、「成功の証」の積み重ねが視覚的にわかり、自信につながります。
岡田 実は、私も「シールをあげる」ということは試したことがあるのですが、いまいち効果がなかったというか・・・うちの子には合わなかったということでしょうか。
亀田 もちろん、子どもによって合う・合わないはありますが、もしかすると次のような工夫をすると変化があるかもしれません。
・シールやシールをはる台紙を本人の好きな絵にする(例/キャラクターシール、動物園のような台紙)
・シールをいくつか集めると特別なごほうびがある(例/5つシールを集めたらおやつにカップケーキ、8つシールを集めるとぬいぐるみ)
実はこれらは大人の生活の中にも活用されている考え方で、ポイントカードなんかそうですね。
岡田 確かに、ポイントと商品が交換できそうになると、お店に行きたくなりますね。
亀田 この「〇個シールを集めたら~をあげる」という方法を「トークンエコノミー」と言います。ほめ言葉と一緒に、トークン(ここではシール)を与えること、「〇個集めたら~」の約束をあらかじめしておくことが成功のコツです。
岡田 参考になります。
亀田 ほかにも、「プレマックの原理」というものがあります。難しそうな名前ですが、実は皆さんよく使っている技です。子どもの挑戦(ここではトイトレ)の後に、「本人がよく行う楽しみ」を設定し、そのことを伝えてから取り組むというものです。
岡田 「トイレに行ったら、電車のおもちゃで遊ぼう」などですか?
亀田 そのとおりです。人は挑戦の後に、いいことがあると知るとモチベーションが高まります。それを利用するわけですが注意点もあります。言い方の問題なのですが、
A「トイレに座ったら、塗り絵をしよう」
B「トイレに座らないと、塗り絵はできないよ」
では、受ける印象が大きく違うのがわかりますか?
岡田 Bは少し、プレッシャーがかかりますね。Aのほうがワクワクします。
亀田 そのとおりです。Bでは、やはりモチベーションは上がりにくいです。トイトレの話に限ったことではないですが、私自身もあせっているときなど、わが子や生徒に対してBのような言い方になってしまうことがあります。まわりの大人たちの言葉ひとつで、子どもの行動は変わります。心に余裕を持って取り組めるよう、ママやパパ、ときには先生とチームを組んで、トイトレに臨めるといいですね。
岡田 保護者が1人で抱え込むのではなく、「チームで」というのは重要ですね。
亀田先生、3回にわたってありがとうございました。
「しかるのはNG」「できたことをほめよう」というのはトイトレにおける大原則。
一方で、具体的なほめ方や、ほめるためのスキルについて知る機会はなかなかないのではないでしょうか。
めざすゴールをこまかく分割して、こまめにほめ(報酬を与え)ながらクリアさせる、というのはトイトレに限らず子育てにおけるさまざまな場面(お片づけ、学校の宿題、また大人のダイエットや脱ダラダラスマホなど・・・)で使える考え方です。
お話・監修/亀田准季先生、岡田百合香先生 文/岡田百合香先生 構成/たまひよONLINE編集部
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岡田百合香先生と亀田准季先生の対談でお届けしてきた「応用行動分析」で考えるトイレトレーニング。ぜひ皆さん家庭のトイトレに活用してみてください。
お話・監修/亀田准季先生 文/岡田百合香先生 構成/たまひよONLINE編集部
亀田准季先生
PROFILE
愛知県出身。これまで特別支援学校(肢体不自由、知的障害)を中心に、小学校特別支援学級や高校通級などで多様な特別支援ニーズのある子の教育に携わる。その中で得た知識や経験をもとに、特別支援教育について学ぶサークルを立ち上げ、多くの学校関係者等とともに、地域の特別支援教育の推進に努めている。
専門は応用行動分析、ペアレントトレーニング。3児の父。
●記事の内容は2025年2月の情報で、現在と異なる場合があります。
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