タレントの倉持由香さんは、プロゲーマーのふ~どさんと2019年に結婚。もうすぐ4歳になる長男・湊くんは、2歳のとき発達障害のひとつである自閉スペクトラム症と診断されました。
「たまひよONLINE」では、2024年7月に倉持さんに、湊くんが自閉スペクトラム症と診断されるまでのことや公表にいたった経緯をインタビューしましたが、あれから約1年がたち、いろいろな変化が。倉持さんに湊くんの成長や子育てについて聞く、全2回インタビューの前編です。
3歳になって「そら」「ひこうき」などの一語文が
湊くんは、2歳のとき自閉スペクトラム症と診断されました。言葉の発達もゆっくりでしたが、3歳になって一語文が出ました。
――最近の湊くんの様子について教えてください。
倉持さん(以下敬称略) 湊は2歳を過ぎても「ママ」「まんま」など一語文が出なかったのですが、3歳になったころから一語文が出るようになりました。保育園の帰りに、空を指さしながら「そら」「ひこうき」と言ったりもします。
――言葉の発達は、どのように促したのでしょうか。
倉持 とにかく湊にたくさん話しかけました。最初は反応してくれないので、むなしさもありましたが・・・。でも「牛乳飲む?」「牛乳だよ。おいしいね」などと毎日話しかけているうちに、最近は自分からコップを持ってきて、冷蔵庫から牛乳を取り出して「ぎゅうにゅ」と言えるようになったんですよ!
しかも「冷蔵庫閉めてね」と言うとちゃんと閉められるんです。ゆっくりですが、成長を感じますね。
イラストでおふろの絵が描かれた、絵カードを使って「おふろ」と教えたりしたこともあるのですが、湊は絵カードにはあまり興味を示さなくて。視覚優位の子には絵カードは向くようですが、湊には向いていないようでした。
私が「おふろ入るよ」と声をかけ続けているうちに、「おふろ入るよ」と言うと、自分からおふろに行くようになりました。
――「ママ」「パパ」と呼んだりはしますか。
倉持 まだ「ママ」「パパ」とは言えないのですが、「カカ」「トト」と繰り返し教えたら、私のことを「カカ」、夫のことを「トト」と少しずつ呼ぶようになりました。「ママ」「パパ」より「カカ」「トト」のほうが言いやすいようです。
――言葉以外に成長を感じることはありますか。
倉持 湊は感覚過敏があるようで、抱っこしたり、手をつなぐことを嫌がるんです。抱っこすると体をそって嫌がるので、抱っこがなかなかできなくて・・・。
診断がついた2歳から、週1回療育に通っているのですが、療育ではママ・パパが抱っこしたり、子どもを太ももに座らせて親子でリトミックをする時間があります。湊はのけぞって嫌がったり、みんなの輪からはずれてどこかに行ってしまったりしていました。でも、あきらめずに続けていたら、抱っこできるようになったんです。
言葉の発達も同じですが、あきらめずに根気よく続けていくことって大切だなと思いました。
――ほかに療育に通っていて、よかったと思うことを教えてください。
倉持 自閉スペクトラム症は特性のひとつに、他者の気持ちを察することが苦手だったり、他者にあまり関心を示さないということがあるんです。
湊もそうした一面がありました。でも療育に通っているうちに、泣いている子がいると頭をなでてあげたり、湊も一緒に泣きだしたりするんです。友だちが悲しんでいると、寄り添うような様子を見せます。もしかしたら療育に通っていなければ、こうした気持ちは芽生えなかったかもしれません。
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春から、大きな保育園に転園。保育園の年少クラスに
湊くんは、2025年の春から保育園の年少クラスになりました。
――SNSで転園したとありましたが、新しい保育園にはなじめていますか。
倉持 これまで通っていた保育園は小規模な園で0~2歳児クラスしかないので、この春から大きな保育園に転園しました。
慣らし保育の初日は、私にくっついて離れなくて、私が帰ろうとすると泣いて大変でしたが、2日目からは泣かなくなりました。湊が好きな電車のおもちゃがあったからだと思います。私が帰るのも気づかないほど、夢中になって電車のおもちゃで遊んでいました。
以前、通っていた園の先生が、転園先の園長先生と連絡をとってくださり「積み木などをまっすぐ並べているときに、邪魔をされるとパニックを起こしやすいです」「おもちゃはこういった種類のものが好きです」「“ダメ”という否定の言葉を使うとパニックを起こしやすいので、“〇〇しようね”などのポジティブな言葉かけのほうがよさそうです」など、湊へのかかわり方のコツを事前共有してくださったみたいなんです。手厚くサポートしてくださり保育園の先生方には感謝しかありません。
――療育は、今も通っているのでしょうか。
倉持 この春、週1のグループ療育から隔週の個別療育に切り替えました。湊は自閉スペクトラム症の特性もあり、お友だちとのコミュニケーションがなかなか苦手です。以前、遊んでいたおもちゃを横から取られてしまったときに、湊がパニックを起こしてお友だちの顔を攻撃してしまったことがあり・・・。親御さんにはひたすら謝罪をしたのですが、私もグループ療育に通うのが心苦しくなってしまって。
全体で5人くらいだった小規模園から3歳児クラスだけで20人近くいる大規模な保育園に転園して、湊も常にいろいろな友だちとかかわるのは疲れちゃうかなと思い、個別療育にしました。今後の様子しだいではまたグループ療育に戻ることも考えています。
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障害の有無にかかわらず、孤独な子育てはきつい
倉持さんは、2024年4月に湊くんが自閉スペクトラム症であることを公表。公表して気持ちがラクになったと言います。
――湊くんの発達障害を公表して1年がたちましたが、公表後の変化を教えてください。
倉持 最も変わったのは、私のメンタル面です。障害の有無にかかわらず、子育てって孤独がいちばんきついと思うんです。
振り返ると、私は湊のことを公表しなかった時期がいちばんきつかったですね。子育てをしていると、悪気ゼロでごく自然に「そろそろ2歳だから、もうママって言うでしょ?」などと聞かれることがあるのですが、そのたびに「うちの子、まだ一語文も話せなくて」と本当のことを言いだせないのがつらくて・・・。うそをついているようで苦しかったです。
また定型発達の子と比べてしまうのがつらくて、まわりと距離をとっていた時期もあります。そのときは孤独できつかったです。
でも公表して、療育に通い始めてから、すごく気持ちがラクになりました。
療育に行くとほかのママたちと「うちも!」と共感し合えるし、保育園の先生には偏食のことや夜、なかなか寝つかないことなど気軽に相談したりしています。
湊がむし歯になったときも、どこの歯科医院に行っていいのか悩んでいたのですが、療育で知り合ったママに「近くにいい障害者歯科があるよ」と教えていただいて連れて行きました。歯科治療は初めてのため湊はギャン泣きで怖がっていたのですが、障害児とのかかわり合いに慣れた先生が動かないようにネットで体をクルッとやさしく巻いて固定し、スムーズに治療してくださいました。
毎日夫と2人がかりで歯磨きをしているのですが、湊は感覚過敏なのか、歯ブラシが口に入るのをとても嫌がるんですよ。ドスドスとけられながらやっています。偏食が激しくて100%りんごジュースしか飲んでいなかったせいもありむし歯になっちゃったと思うので、水を飲んでくれるようになるまで、根気よく水を口に運ぶのを続けました。
パニックを起こしやすい子のむし歯の治療は大変なので、湊には「もうりんごジュースはやめようね。買わないよ」と約束して、湊も理解してくれました。
定型発達の子のような発達過程ではありませんが、それでもひとつひとつできることが増えていて、湊の成長が本当にうれしいです。
――先日、夫のプロゲーマー・ふ~どさんの対戦会でベトナムに行ったようですが、湊くんはどうしていたのでしょうか。
倉持 ベトナムに行ったときは、湊は長距離の移動は難しいので、私の父や友人、シッターさんが家に来て湊とたくさん遊んでお留守番してくれました。夫婦とも仕事で遠征するときなどは夫の実家で預かっていただくことも多いです。
湊は、人見知りをまったくしないのですが、特性を知っておいてもらわないと父や母が困ってしまう場面があるので、預けるときは「湊は偏食が多いので食べられるものはうどん、ラーメン、蒸しパン、バナナ、フライドポテト・・・。ねぎ、パセリを入れると嫌がって“取って”と言われます」「睡眠障害があり寝かしつけようとしても、なかなか寝ません。真っ暗にするとパニックになるので小さい電気をつけて、寝たふりをするとそのうちスッと寝ます」など、湊のトリセツを伝えています。両実家とも、湊のことをよく理解してくれているのと、私の実家が千葉県の船橋市にあり、近めなので助かっていますね。
――みんなの力を借りながら、湊くんを育てている感じですね。
倉持 頼れる人がいたり、本音で話せる人がいるって本当に大切なことです。ときには「子どもに発達特性があるけれど、だれにも言えない」と悩んでいるママ・パパもいるようですが、その状態が続くと、ママ・パパがいつかつぶれてしまうかもしれません。SNSでつながるなどどんなカタチでもいいので、孤独にならないでほしいと思います。
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水遊びが怖い、湊くん
水遊びはちょっぴり怖い湊くん。慣れるまではママの足にしがみついてます。
トイカメラがお気に入り
3歳のクリスマスプレゼントで、倉持さんとふ~どさんが湊くんに贈ったトイカメラがお気に入り。「カシャ! カシャ!」と言いながら、楽しそうにいろんなものを撮っています。
家族でグランピングヘ
家族でグランピングに初挑戦。湊くんは、ありを見つけると「あり」と言ったり、栗のイガに興味津々。
お話・写真提供/倉持由香さん 取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部
倉持さんは、湊くんが一語文話せるようになり、意思疎通ができるようになったことをとても喜んでいます。「『お出かけするよ~』と言うと自分から玄関に行くし、牛乳が飲みたいときは自分でコップを持ってきて『ぎゅうにゅ』と言います。2語文はまだ話せないけれど、湊と意思疎通ができることが本当にうれしい」と話します。
インタビューの後編は、倉持さんが「児童発達支援士」の資格を取った理由や、資格を取って変わったことなどを紹介します。
「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。
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倉持由香さん(くらもちゆか)
PROFILE
千葉県船橋市出身。グラビアアイドル、タレント、俳優として活躍。2019年、約10年間の交際期間を経てプロゲーマーであるふ〜ど氏と結婚。2021年、長男の湊くんを出産。2024年、湊くんが自閉スペクトラム症であることを公表した。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2025年4月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
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