12歳の長男、9歳の長女、5歳の二男を育てるママでもあり、“ママ友ドクター®”として診察室やSNSやオンラインスクール、コミュニティで、子どもの発達に悩む親をサポートしている西村佑美先生。西村先生が実践していたことをベースに子どもの発育・発達に大切なことを聞く連載「ママ小児科医がすすめる ポジティブ育児」の3回目です。
遊びは脳の発達をうながす、最高の栄養
こんにちは。ママ友ドクター®ゆみ先生こと西村佑美です。私は小児科医として、そして3人の子どもを育てる母として、日々たくさんの「遊び」と向き合っています。子どもは遊びの天才であり、遊びは、脳の発達をうながす"最高の栄養"です。今回は、子どもの成長段階に応じたおもちゃの選び方や、わが家で実践してきた遊びの工夫をご紹介します。
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【乳児期(0~1歳)】五感を育てる「感じる」遊びを取り入れて
0歳の赤ちゃんは、視覚・聴覚・触覚など五感をフル稼働させながら、世界を「感じる」ことに夢中な時期。おもちゃを選ぶときには、音・色・手触りに注目して選んでみましょう。
このころおすすめのおもちゃは?
・ベビージム
・鏡つきおもちゃ
・絵カード
・コントラストの強いモビール
・ガラガラ
・布絵本
・異素材の布を使ったタオルやボール
【このころのわが家のエピソード】タオル1枚でどんどん遊べる
長男が生後4カ月くらいのとき、私は初めての育児で「どんなおもちゃが発達にいいの?」と悩んでいました。そんな中、参考にしたのは、おもちゃ売り場の店員さんのアドバイスや『こどもちゃれんじbaby』。発達段階に合わせて家におもちゃが実際に届くため、「今のわが子にちょうどいい」内容や工夫が学べて助かりました。
また、おすわりができる時期からは、身近なものすべてがおもちゃになります。たとえばタオル。顔を隠して「いないいない・・・」と言って、タオルを引っ張って「ばあ!」と言えば大喜び。タオル1枚あればずっと楽しんでくれます。ちなみに、この単純な遊びは「物の永続性」つまり、見えなくなっても物は存在するという認知発達の重要な概念を学ぶ機会となります。
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【幼児期・1〜2歳】動きと言葉の「まねっこ」遊び
この時期は、歩き始めたり、簡単な言葉を話し始めたりと、「まねっこ力」がぐんぐん伸びる時期で好奇心もおう盛。大人のすることや周囲をよく見ていて多くのことを吸収します。脳が急速に発達する時期です。
このころのおすすめおもちゃは?
・音が出る絵本
・積み木
・コップ重ね
・おままごとセット
・リズム遊び用の太鼓・タンバリン
・自然の中で見つけたもの
【このころのわが家のエピソード】新しい発見、が脳の刺激に
このころの『こどもちゃれんじ』の教材を参考にして、似たようなおもちゃや絵本をお店で探して追加することもありました。1歳過ぎると子ども向けの絵本の選び方にも悩むため、クレヨンハウスや童話館といった配本サービスも利用していました。
テレビやYouTubeなど一方向的な刺激よりも、大人と一緒に遊びながら「対話」「新しい発見」を通して学ぶことが、脳の発達には何よりも効果的。また、積み木だって、単に積むだけでなく「これは電車にみえる!」と発見して見立てて遊ぶようになっていきます。見立て遊びは将来の創造性の基礎となります。
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【幼児期・3歳前後】「ごっこ遊び」と「構成遊び」で想像力を広げて
3歳を過ぎると、頭の中の世界を形にする「想像力」が育ち始めます。役になりきって遊んだり、自分なりの物語を作ったりと、自由な表現を楽しむ姿が見られるようになります。ごっこ遊びは、社会性や感情のコントロールを学ぶ重要なステージ。遊びの中で「順番」「ルール」「思いやり」なども学んでいくことができます。家族の中で役になりきる"おしばいごっこ"は、子どもが安心して自己表現するいい機会になりますし、自己制御や計画性が育ち始めます。
このころのおすすめおもちゃは?
・ブロック、のりもの、人形
・ごっこ遊びセット(病院、消防署など)
・ボードゲーム(すごろくなど)
・粘土やお絵描き道具
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【このころのわが家のエピソード】なりきり大好き
わが家の3人目は、このころはいろいろな役になりきる毎日でした。4歳年上の姉といっしょにドレスを着てプリンセスごっこをしたり、7歳上の兄とヒーローごっこをしたり、警察官になって公園をパトロールしたり。毎日のようにミニおしばいが繰り広げられました。インターネットで子ども用の衣装がたくさん手に入る時代なので、私は、子どもたちのなりきりを応援して楽しみました。
結果的に自然に言葉と感情表現の幅が広がりました。
【幼児期・4〜6歳】遊びは"創造"と"自立"のステージへ
少し先の話になりますが、4〜6歳は「自分で考えて、自分でやってみる」ことを楽しむ時期。おもちゃも、ただ与えるだけでなく、作る・考える・工夫する要素があるものがおすすめです。この年齢になると、前頭前野がさらに発達し、計画性や論理的思考が育ちます。
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このころのおすすめおもちゃは?
・パズル(ピース数が増えたもの)
・ボードゲーム(記憶力・論理力を使うもの)
・カードゲーム(神経衰弱、UNOなど)
・工作用キット
・簡単な文字・数字のゲーム
・プログラミング的思考を育てる知育玩具
【このころのわが家のエピソード】家族みんなで遊ぶ
少しずつ複雑な遊びができるようになり、親も一緒に楽しめる時期になります。毎晩、夕食後寝る前に時間を作り、ボードゲームやカードゲームを家族みんなでやりました。長男は当時、うまくできないときイライラして怒ったりすることもありましたが、少しずつ「負けても勝っても、みんなで楽しむもの」という感覚を学んでくれました。遊びが想像力や表現力を広げてくれるだけでなく、家族のつながりも深めてくれます。
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【小児科医ママのポイント】遊びと脳の関係とは?
研究によると、「自由な遊び(自由遊び)」の時間が多い子どもほど、集中力・創造力・社会性が高い傾向があります(※1)。また、アメリカ小児科学会(AAP)も「未就学児にとって遊びは学びの土台である」と提言しています(※2)。
最近では発達支援の分野でも遊びの重要性が再認識されています。自閉症スペクトラム症(ASD)などの発達が気になる子どもへの介入プログラムでは、ESDMやJASPERなど「遊びを通じたかかわり」が注目されています。子どもの自然な遊びの中で社会的コミュニケーションや発達を総合的に支援します。これらの方法の基本は、実はどんな子の育児にも応用できる「子どもの視点に立った遊び」なのです。
「どんなおもちゃ・遊びがいいかな?」と悩んだときには、子どもの「今できること」と「背伸びすればできそうなこと」の中間を意識してみてください。まだ早かったとしても、子どもはすぐ成長するので少しすれば楽しめるようになります。そして何よりも大切なのは、「親子が一緒に遊ぶ時間」です。子どもの興味に寄り添い、一緒に遊ぶ時間が何より脳の発達にいい影響を与えます。まずは、子どもの「夢中」をよく観察してみましょう。そしてそれを声にだしてみる(ナレーション)。何に興味を示し、どう遊びを発展させるか、肯定的注目を続けると自然とその子に合う接し方・声がけに気づけます。忙しい毎日ですが、短い時間でも質の高いかかわりを意識してみましょう。おもちゃは、そのかけ橋となる大切なツールです。
文・写真提供・監修/西村佑美先生 構成/たまひよONLINE編集部
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西村先生は「ママ・パパと赤ちゃん・子どもが一緒に一緒に遊ぶ時間が大切」と言います。脳がすくすく成長する乳幼児期に、赤ちゃん・子どもとの遊びとかかわりについて少し工夫をしてみませんか。
【参考文献】
※1:Hirsh-Pasek, K. et al. (2009). A Mandate for Playful Learning in Preschool: Presenting the Evidence. Oxford University Press.
※2:Yogman, M. et al. (2018). The Power of Play: A Pediatric Role in Enhancing Development in Young Children. Pediatrics, 142(3):e20182058.
●記事の内容は2025年5月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
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