布を発泡スチロールのパネルに埋め込み、絵を描く“きめこみイラストレーター”として、広く活躍中のつぼしまみさとさん。4人の小学生のママですが、そのうち3人は一卵性の三つ子の男の子です。前編では一卵性三つ子だとわかった瞬間の驚きや大変だった妊娠生活、たくさんのスタッフに囲まれての出産についてお話を聞きましたが、後編では生まれてきてからの育児について赤ちゃん時代と今と両方のお話を詳しく話してもらいました。
「このままじゃ倒れる」…頼ったのは自治体の産後ヘルパー制度
――前回は出産のときまでのお話を聞きましたが、後編では退院後の育児についてお話を聞かせてください。
つぼしま(以下敬称略) 生まれて42日目に三つ子が3人そろって退院をしました。夫は仕事がとても忙しく、そのときもちょうど繁忙期で、夜中帰りが続くような状況。育児に参加するのは難しかったですね。ただ、幸いなことに私の実家が近いので、母が大人用のごはんを保存容器に詰めて持って来てくれていました。忙しくて自分たちの食事がおろそかになりそうだったので、それはとても助かりました。
――ごはん、大事ですね!4人の育児は基本つぼしまさん1人で対応されていたのですか?
つぼしま ほぼそうですね。でも「さすがにこれは無理だ」と思って、自治体に相談しました。すると、産後ヘルパー制度を紹介してもらうことができたので、その派遣先の会社に問い合わせてみたら、週に3回、2時間ずつ、1回500円で来てもらえることになったんです。
――それはよかった!
つぼしま 派遣されたヘルパーさんが本当に素晴らしくて、短時間で3日分のごはんを用意してくれたり、掃除も「2時間の間なら、なんでもやりますよ!」と言ってくださって、トイレ掃除までお願いしちゃったり。看護師さんの資格を持つ方だったので、三つ子のおふろや授乳のサポートをしてもらうこともありました。
――いいヘルパーさんに出会われたんですね。
つぼしま はい。ここまでやってくれるなんて!と、本当にありがたかったです。ほかにも、住んでいるマンションの管理人さん夫婦にとてもお世話になりました。当時、長女が毎日マンション前で止まる通園バスに乗ってこども園に通っていたのですが、帰ってくる時間に私がバスの止まる場所に行って引き取らないといけなかったんですね。3人を連れて行けるときはいいのですが、難しいときは少しの間、管理人さんに頼み、三つ子を見てもらったりもしていました。
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三つ子が6カ月のある日。睡眠不足がたたり、体調が悪化
――当時、夜は眠れていましたか?
つぼしま 全然寝られなかったです。三つ子にミルクをあげて、1人ずつゲップさせると、それだけで1時間はかかるし、そのあと、30分後には誰かが起きてしまう。あまりに疲れすぎて、自分が布団にたどり着く前に床で寝落ちしていたこともありました。
先ほどお話しした看護師資格を持つ産後ヘルパーさんからは「“1日を通してどのくらい眠れたか”で考えたほうがいいよ」と言われたので、その言葉を支えに、30分×数回でも、今日は何時間寝られたと考えるようにしていましたね。
――お疲れさまでしたね。体調を大きく崩すことはなかったのでしょうか?
つぼしま 子どもが6カ月のときに体調を大きく崩しました。ある日、“においがしない”ことに気づいたんです。さらに耳が聞こえづらかったり、耳鳴りの症状も出たりして。ちょうどヘルパーさんが来てくださる日で、「睡眠不足によるストレスかもしれないから、とにかく睡眠を取ったほうがいい」と強く言われ、その日はたっぷり寝かせてもらうことにしました。
その後、病院に行ったのですが、自分では気づかぬうちに咳(せき)が悪化していたというせいもあったようで、薬を飲んで、母に来てもらって、できるだけ眠るようにしました。もちろん、ヘルパーさんの来る日も毎回寝かせてもらっていましたね。そうしていると、徐々に症状もよくなっていったので、睡眠って本当に大事だなと思いました。
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子どもセンターに4人を連れて通っていたのが縁で、ワークショップを開催することに
――少し楽になったのはいつのことですか?
つぼしま 生後8カ月ころかな。子どもたちが保育園に入園できたんです。園バスで認可外に通っていた長女も、同じ認可保育園に転園させたかったので、4人で希望を出しました。家の近くは全滅でしたが、第9希望くらいまで書いたら、少し離れた新設園に無事に決まりました。
――保育園に入れてよかったですね!
つぼしま はい。平日は保育園で、土曜日は住んでいるマンションの隣にある子どもセンターでよくお世話になりました。この子どもセンターは保育園入園前も毎日のように通っていたところで、スタッフの先生には三つ子の卒園ごろまで、たくさん気にかけてもらいました。
また、普段、私はきめこみの作家活動のかたわら、作品の作り方を教える親子講座も開いているのですが、その子どもセンターでもワークショップを開催させてもらったんです。
――子育ての縁が作家活動の縁としてつながったんですね!お子さんもクリエイティブな創作活動に興味があるのですか?
つぼしま 長女は絵を描くのが好きで、何度か賞状をもらって来たりもしています。私のワークショップにもついて来ることもありますし、家にいい資材があると、自分なりにアイデアをふくらませながら、きめこみに取り組んでいますね。
三つ子はまだそこまでではないですが、最近は「きめこみをやってみたい」と言い出すこともあって。ハサミなどを自由に渡すのは、まだ少し怖いので様子を見ながらですが、やりたい気持ちが芽生えてきたのはうれしいですね。
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自然とチームに!公園遊びで感じる「三つ子っていいな」
――三つ子くんたちもすでに小学2年生とのことですが、最近「三つ子でよかったな」と感じたことってどんなことですか?
つぼしま ここ最近は、公園でサッカーをよくするんですが、3人がそれぞれに「やるよ!」と声をかけ合っていて、自然とチームのように遊び始めるんですよ。そういう姿を見ると、「三つ子っていいな」と改めて感じます。
――逆に三つ子って改めて大変だなと思った瞬間は?
つぼしま お菓子など、3人とも同じものを渡しているのに、「こっちのほうが多い!」とか「そっちばっかりずるい!」とすぐけんかになるところかな。たたいたりやり返したりもあって、止めに入るのが大変!よく漫画でけんかの表現として、もこもこと土煙が舞って、中から手や足が出ている絵があると思うんですが、まさにそんな感じです(苦笑)。
――イメージできます(笑)。
つぼしま 本当にそうなんです。長女も三つ子も一緒に家の中で走り回るので、「走らないよ!」と何度も言っているんですが…。声を張り過ぎて、長期休みには声が枯れていますね!
お話・写真提供/つぼしまみさとさん 取材・文/江原めぐみ、たまひよONLINE編集部
地域の助けを得ながら、長女と三つ子の育児を頑張ってきたつぼしまさん。子どもセンターとのご縁が、やがて自身の創作活動にもつながり、子育ても地域も創作も、輪のようにゆるやかにつながっていった様子が印象的でした。これからも、4人のお子さんの成長はもちろん、創作の世界がどのように広がっていくか楽しみです。
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つぼしまみさとさん
PROFILE
1977年生まれ。布を発泡スチロールパネル(ハレパネ)に埋め込み絵を描く「きめこみイラストレーター」として活動。情報誌・雑誌・企業カレンダーなどのイラストレーションを担当する他、「空間に飾って楽しい作品」をテーマに、毎年個展で作品を発表・販売。きめこみを楽しむワークショップの講師も勤める。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●掲載している情報は2025年6月現在のものです。
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