病気やけがなどの治療の際に重要な役割を果たす薬ですが、正しく服用しないと効果が半減したり、効きにくくなったりすることがあります。つらい症状を解消するための薬が効かないと困ってしまいますよね。この機会に正しい薬の飲み方を学んでおきましょう。今回は薬が効かない原因と対策を薬剤師が紹介します。
薬が効かない原因
薬が効かない原因は、飲む薬の種類と服用の仕方に問題があることがほとんどです。具体的にどのような原因が考えられるのかみてみましょう。
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薬が合っていない
まず考えられる原因は、自分の体質や症状と合わない薬を飲んでいる場合です。
人によって吸収や代謝の速度は異なるため、薬の効き方にも個人差があります。また、体調不良の原因を見誤り、異なる症状に対応する薬を飲んでしまっている場合も、薬の効果を感じることができません。
このように、自分の体質や症状に合わない薬を飲んでしまうと、薬が効きすぎる、効かない、副作用があらわれるなど、からだにマイナスな影響を与えてしまう危険性があります。医師や薬剤師に相談したうえで、自分の体質や症状に合った薬を選びましょう。(※1)
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薬を飲みすぎている
薬の飲みすぎも薬が効かなくなる原因のひとつです。
とくに頻繁に頭痛薬を使用している人は要注意。効果が出にくいからと薬の量や頻度を増やしたり、痛みがないのに薬を飲んだりすることで、薬を過剰に摂取してしまい、薬物乱用頭痛に陥りやすくなってしまいます。薬物乱用頭痛の代表的な症状としては、月に10日以上の頭痛、吐き気、イライラ、集中力の低下などが挙げられます。
頭痛薬が効かなくて悩んでいる人は、薬の過剰摂取をやめ、当てはまる症状があれば病院を受診しましょう。(※2)
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生活習慣によって薬が効きにくくなっている
嗜好品や食べ物・飲み物と薬の組み合わせにより、薬の効きが悪くなる場合があるので注意が必要です。
たとえば、喘息の薬のテオフィリンを服用している人がたばこを吸うと薬の効きが悪くなってしまいますし、お酒と睡眠薬を一緒に飲むと薬が効きすぎて朝まで眠気が残ってしまいます。
そのほか、血液をサラサラにするワーファリンを服用している人は、納豆を食べると効きが悪くなってしまいますし、グレープフルーツを食べると胃薬の吸収を妨げることもあります。
体調がよくなるまで嗜好品は我慢し、定期的に飲む薬がある人は薬の作用を妨げる食品がないかをよく確かめましょう。(※1)
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薬剤耐性菌に感染している
薬剤耐性菌とは、従来の抗菌薬が効かない細菌のことです。
体内に細菌が侵入することで感染症にかかりますが、その細菌をターゲットにした抗菌薬を用いて退治すれば、健康を取り戻すことができます。
しかし、近年は抗菌薬の乱用によって、従来の抗菌薬に耐性がある細菌が多数確認されており、従来の抗菌薬が効かない場合、薬剤耐性菌に感染している可能性があります。とくに、乳幼児や高齢者など免疫機能が低い人が薬剤耐性菌にかかると、抗菌薬が効かず重症化しやすくなるため注意が必要です。
自己判断で抗菌薬の使用をやめる・始めることで、細菌がしっかりと死滅せず、抗菌薬に耐性のある細菌が残るのが、薬剤耐性菌が増える原因のひとつだといわれています。薬剤耐性菌を増やさないためにも、用法・用量を守った服薬を心がけましょう。(※3)
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薬が効かない場合の対処法
薬が効かないと感じたときは、薬を購入した場所で医師や薬剤師などに相談するのが望ましいです。
市販薬の場合は、登録販売者に相談して薬を変更してもらうか、病院の受診を検討するのをおすすめします。病院で薬を処方してもらった場合は、医師や薬剤師に相談して薬の種類や量を調整してもらいましょう。
それでも状況が変わらない場合は、ほかの医療機関を受診してセカンドオピニオンを求めるのもいいかもしれません。
いずれにしても自己判断は禁物です。専門家に相談して、症状の解消を目指しましょう。
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薬が効かないと感じた場合のNG行動
薬が効かないからといって自己判断で服用量や回数を増やすのはNGです。副作用が起こったり、薬剤耐性菌の増殖につながったりする危険性があります。
そのほか、効きそうな薬を手当たり次第に試してみるのも絶対にやめましょう。症状に合わない薬を飲んでいるあいだに周りの人に病気を移してしまうかもしれませんし、オーバードーズや危険な飲み合わせにより別の健康被害を引き起こす可能性もあります。(※3)
薬が効かないと感じたら、早めに病院を受診し適切に薬を処方してもらうようにしてくださいね。
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用法・用量を守って正しく服用
薬が効かないと感じるときは、薬の種類や量が自分に合っていない場合があります。自己判断はさらなる健康被害を引き起こす可能性があるため、医師や薬剤師に相談のうえ、適切な種類・量の薬を処方してもらうことが、健康への近道です。薬は用法・用量を守り、正しく服用しましょう。
<参考文献>
※1 倉敷平成病院「薬の効果には個人差があります」
※2 MSDマニュアル家庭版「薬物乱用頭痛」
※3 政府広報オンライン「抗菌薬が効かない「薬剤耐性(AMR)」が拡大!一人ひとりができることは?」
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PROFILE
あんしん漢方薬剤師
山形 ゆかり
薬剤師・薬膳アドバイザー・フードコーディネーター。病院薬剤師として在勤中、食養生の大切さに気付き薬膳の道へ入り、牛角・吉野家他薬膳レストランなど15社以上のメニュー開発にも携わる。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホひとつで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」でも薬剤師としてサポートを行う。
●あんしん漢方(オンラインAI漢方):https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/?tag=211332f2tmhy00010131&utm_source=tamahiyo&utm_medium=referral&utm_campaign=250419
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